ワイヤレス・イヤホン型 翻訳機「WT2」の開発で注目されたタイムケトル社より、新型モデル「M2」がリリースされました(2021年1月発売開始)。
「Timekettle M2」は、メインの翻訳機能に加えて、通話・音楽再生にも対応しているため、普通のオーディオ用イヤホンとして活用することも可能。従来モデルと比べて柔軟な利用シーンが期待できます。
この度、発売元のタイムケトル社から、新モデル「M2」と、従来モデル「WT2 Plus」の2台を提供して頂けることになりましたので、両者を比較しつつ特徴や違いをまとめてみようと思います。
重要製品を提供して頂いた場合の記事作成に関して、当ブログではあらかじめガイドラインを設けています。こちらも合わせてお読みください。
「WT2 Plus / M2」の基本情報
「WT2 Plus」と「M2」は、中国深セン発のAI翻訳スタートアップ「Timekettle タイムケトル」が開発した翻訳機です。
タイムケトル社では、他にもスマホに直接 装着して利用する翻訳機など、ユニークかつ斬新なアイディアの翻訳デバイスを続々とリリース中。
2020年には日本法人「タイムケトル・ジャパン株式会社」も設立されており、今 最も注目なAI翻訳機専業メーカーの一つです。
WT2 Plus
WT2 Plusは2019年に発売されたイヤホン型翻訳機。タッチ操作なしで翻訳が可能な「同時通訳モード」を搭載した上位モデルです(公式ページ)。
・「同時通訳」モードを使って タッチ操作なしで翻訳したい方
・同時に1~5人までの相手と会話を行いたい方
Timekettle M2
Timekettle M2(以後M2)は 2021年発売。WT2 Plusでは利用できなかった「音楽・通話」機能を搭載しているのが最大の特徴(公式ページ)。
「M2」はこんな人におすすめ
・普段はワイヤレス イヤホンとして利用したい方
・より長い時間、利用したい方
WT2 Plus/M2:比較表
「WT2 Plus / M2」共通の特徴
イヤホン型だから「両手が自由に使える」
「WT2 Plus / M2」最大の特徴は その形状! 耳に装着するイヤホン型なので、利用時に両手が自由に使えます。
例えば、互いに資料を見ながら会話する、相手に実技を見せながら説明する…といった使い方ができるのが本製品の魅力。
また、対話する人の目を見ながら会話できるので、より深いコミュニケーションが可能になるのもうれしいところ。
ワイヤレスだから「離れた位置で会話ができる」
また、いずれもワイヤレスなので、装着者同士が離れていても会話が可能です。
「WT2 Plus」は最大で10Mまで、「M2」は最大20Mまで離れても利用できます。そのため、しっかりとソーシャルディスタンスを確保し「密」を避けた状態でコミュニケーションを取ることができます。
利用には「本体 + スマホ」が必須
「WT2 Plus / M2」は、いずれも 専用スマホ アプリ「Timekettole」とBluetoothで連携しつつ翻訳作業を行います。
そのため、利用時には「WT2 Plus / M2」本体の他に、必ずスマートフォン アプリの起動が必須になります。 イヤホン部分だけでは翻訳できないので、その点は頭に留めておきましょう。
オフライン翻訳にも対応
「WT2 Plus / M2」は、クラウド型(オンライン型)翻訳をメインにしているめ、翻訳時には、基本的に通信環境が必須になります(※1)。
ただし、一部言語はオフライン翻訳にも対応しており、山間部や離島など電波の届きにくい場所での利用も可能になっています。
- オフライン翻訳可能な言語:「日本語」 ⇄ 「英語・中国語」※2021年1月時点
※1:イヤホン本体に外部通信機能はありませんので(※Bluetoothはスマホとの連携用)、スマホ側でWi-FiやSIMの電波を送受信できるようにしておく必要があります。
翻訳精度は両モデルとも一緒
「WT2 Plus/M2」両モデルには、共通の翻訳エンジンが割り当てられているため、対応言語数・翻訳精度は基本的に一緒です。
- 対応言語数:40種類 93言語(対応言語の一覧はコチラ)
- 翻訳エンジン(一部):Google、Microsoft、iFlytek(中国のAI翻訳機トップ企業)、DeepL (注目の高精度翻訳エンジン)、AmiVoice (日本国内シェアNo.1の音声認識エンジン)、タイムケトル社独自のもの など
タイムケトル社では、自社の翻訳機のために 世界的に評価の高いDeepL、Google など10以上のエンジンを採用しており、言語の組み合わせに応じて、最適なものを割り当てています。
利用場面に応じた「翻訳モード」を搭載
「WT2 Plus / M2」には、使用場面に応じた複数の翻訳モードが搭載されています。
「同時通訳」モード【WT2 Plusのみ】
【イヤホン ⇄ イヤホン】 翻訳機側が「話し手」を自動認識し、翻訳を行ってくれるモードです(使用動画はコチラ)。
発話の際に、ボタン操作の必要がないので、会話の流れを途切らせることなく、スムーズなコミュニケーションが可能になります。
イヤホン型の真骨頂ともいえる機能ですが、認識精度の問題から、屋外など雑音の多い場所での使用には不向き。静かな室内での打ち合わせなどでの利用が想定されます。
「タッチ」モード
【イヤホン ⇄ イヤホン】 イヤホンへのタッチ操作で、「話し手」を手動で設定し 翻訳を行うモードです(使用動画はコチラ)。こちらは雑音の多い屋外などでの利用に適したモードです。
両モデルで挙動にやや違いがあり、「WT2 Plus」では、発話の開始時と終了時に それぞれタッチを行います(終了時のタッチ後に翻訳スタート)。
「M2」では、一度 タッチして「話し手」を決めたら、相手側がタッチするまで、その話し手側の翻訳ターンが自動継続します(会話の途切れを翻訳機が自動検出してその都度 翻訳)。そのため、なにかを案内・説明したりする場合など、片方が一方的に話す場面では、ほぼタッチレスで 翻訳が可能になります。
「スピーカー」モード
【イヤホン ⇄ スマホ】 こちらは、自分だけがイヤホンを装着し、スマートフォンのスピーカー機能を使って、翻訳された音声を相手に聞かせるモードです(使用動画はコチラ)。
相手が話す際には、スマホ画面をタッチしてから話してもらいます。
例えば、海外旅行時に道を尋ねるようなケースで、イヤホンを相手に渡すのに心理的な抵抗がある場合には、こちらの「スピーカー」モードを利用するとよいでしょう。
「リッスン」モード【M2のみ】
【スマホ → イヤホン】 こちらは、外国語の「聞き取り」専用のモードです(使用動画はコチラ)。スマートフォンのマイク機能を使って 相手の音声を聞き取り、スマホには文字起こし、イヤホンには翻訳音声が流れます。
「WT2 Plus / M2」の相違点
「M2」は音楽・通話にも対応
両モデルは、いずれもワイヤレス・イヤホン型の形状が特徴ですが、従来モデルの「WT2 Plus」は翻訳以外の用途に使用できません(ココ大事)。
新モデル「M2」は、通話・音楽機能にも対応しているので、スマホ用のワイヤレス・イヤホンとしても活用することができます。
「M2」は軽くてバッテリーも長持ち
イヤホンとケースの重さは「M2」の方が軽くなっています。
また、バッテリーの持ち時間も、「M2」の方が1時間程度長くなり、長時間の使用にも耐えられるようになりました。
「WT2 Plus」は翻訳サポート機能が充実
「WT2 Plus / M2」は、翻訳の精度には差がありません。しかし、翻訳操作の柔軟性や、翻訳サポート機能に関しては「WT2 Plus」の方が充実しています。
「WT2 Plus」には、本体が話し手を自動判定して翻訳を行う「同時通訳モード」が搭載されています。「同時通訳モード」では、会話ごとのタッチ操作が不要なため、より深いコミュニケーションが可能になります。
「M2」には、「同時通訳モード」は搭載されておらず、話し手側が 本体をタッチしてから話す「タッチモード」が搭載されています。
タイムケトルでは、オフライン翻訳に用いる言語パックは、独自のポイントを使って 購入・ダウンロードする仕組みになっています。
「WT2 Plus」は すべてのパックが無料でダウンロードできますが、「M2」は「6組まで無料」と上限が設けられています。
「WT2 Plus」は 3台まで同時接続できる
「WT2 Plus」は、本体を買い足すことで、最高3台(イヤホン:6個)までが 同時利用が可能になります(Bluetooth 5.0以降 必須)。
しかし「M2」は、同時利用可能なのは 1台(イヤホン:2個)までとなっています。
例えば、複数人を相手に観光地を案内する…といったシチュエーションでの利用は「WT2 Plus」の方が適しています。
【レビュー】「M2」を着けて街を観光案内してみた
というわけで、新型モデル「M2」を実際に使用してみました。
今回は「M2」を装着して、妻と2人で 近所を散歩しながら、相互にガイド役となって街案内をするイメージで利用してみました(タッチモード:「日・英」で使用)。
話してから翻訳が完了するまでのタイムラグは、体感値で「0.5 ~ 3秒くらい(言葉によって変動)」。ポケトークなどと比べると「ちょっと反応が遅め」な印象です。
M2の場合、ポケトークのような一体型モデルに比べて、「イヤホン — スマホ」間の往復通信が余計に発生しているので、その分が影響しているものと思われます。
屋外で会話する場合、妻の音声(やや声が小さめ)を認識しない場面がしばしばありました。
人によっては、通常の会話時よりも、ちょっと大きめに声を発する必要がありそうです。
友人同士で行うような 通常の話し言葉は苦手な模様で、翻訳以前に、日本語の聞き取り(音声認識)時点で 誤認識するケースが多々見られました。
- 正:白山通りの道路の脇を歩いています。結構な車の量があるので、音はなかなか騒々しいですね
- M2:たくさんどうりの道路の脇を歩いています。結構な車の動画あるので、音はなかなか想像しいですね。
会話を行う際は、以下のような「音声認識されやすい話し方」を意識して会話を行う必要があります。
- ゆっくりと滑舌よく話す
- 固有名詞・専門用語・流行語は避ける
- 文脈をはっきりさせる
- できるだけ主語を入れ込む
- できるだけ短文にする
ただ、現状では、本機に限らずどの翻訳機も 多少は「音声認識されやすい話し方」が求められるのが実情です。
Timekettle公式ブログでは、翻訳精度が上がるコツを公開しているので、使用前に一度目を通しておくとよいでしょう(【保存版】翻訳機メーカー担当者が教える、翻訳精度が上がる3つのコツ)。
正しく日本語で音声認識できたものに対する翻訳結果は、特に大きな問題は感じられませんでした。
- 私:ここは東京の中野区です。非常に人口が多い街です。
- M2:【認識】ここは東京の中野区です。非常に人口が多い街です。【翻訳】This is Nakano Ward in Tokyo. It is a very populous city.
- 私:このお店には商品がなかったので、もう1つ別のお店に行きます。
- M2:【認識】このお店には商品がなかったので、もう1つ別のお店に行きます。【翻訳】There were no products in this store, so I will go to another store.
翻訳させる文章によって差はあるものの、おおよそザックリと意味が分かる程度には翻訳されています。日常会話レベルであれば 十分実用に耐えるのではないかと思います。
【まとめ】買い物カゴを持ちながらの会話も快適
競合製品に比べて翻訳時のタイムラグが やや大き目なのが残念。また、使用環境の問題もあるかと思いますが、音声認識の精度にムラがあり、会話が聞き取れていないケースも 何度かありました。
ただし、これらはアップデート次第で改善できる部分だと思いますので、今後に期待したいところです。
一方で、翻訳自体の精度は 特に問題なく、日常会話レベルであれば 十分に活躍してくれると思います。
ワイヤレス イヤホン型ゆえ、両手が自由に使えたのがとにかく快適。買い物かごをぶら下げながら会話する場面でもストレスなく翻訳をしてくれました。
・「同時通訳」モードを使って タッチ操作なしで翻訳したい方
・同時に1~5人までの相手と会話を行いたい方
「M2」がおすすめな人
・普段はワイヤレス イヤホンとして利用したい方
・より長い時間、利用したい方